この寺は一般には院号の「乗明院」で呼ばれている。寺号は「魚遊寺」という。その昔、この地方の有力者がここに池を作って釣りを楽しもうとしたところ、池の水が熱水に変わり、魚を入れることができなかかった。それに驚いて僧に判じてもらったところ、それは殺生をしようとしたためであるとわかり、悔い改めたところ池はもとの水に戻り、魚を放つことができたという。その僧が乗明院の開山となり、寺の名を魚遊寺としたという伝説がある。
現代であれば、釣り池よりもっとよい温泉が手に入ったのだから喜びそうなもので、微妙な開山縁起である。
この寺の特徴は、その周囲に濠を巡らせていることである。濠はかなり立派であり、環濠屋敷としての貫録はどこに出しても恥ずかしくないほど。
本によれば、濠はもともと二重にあって、東西に痕跡があるという。熊野神社の項で紹介した北側の濠がそれなのだろうか。
左写真は南東側の角。
北東側の角。
濠は完全に寺の周囲をまわっている。
南西側の角。
北西側の角。
このくらいの広さがあれば、ちょっとした防御にはなりそうだ。
本堂。
釈迦三尊板碑堂。
ガラス越しのぞいて見たが、線刻はよくわからなかった。雲に乗って来迎する三尊の姿が描かれているという。
本土の左側には近代的な庫裏。
本堂の裏手には、東司か湯屋のようなものがある。内部が見れなかったので未確認だが、湯屋だとしたら、群馬県ではかなり貴重な建築ではないかと思う。
不動堂。
もとは末寺の覚動寺という寺に祭られていたが、昭和大橋の建設で取り壊され、この場所に祭られるようになったという。
(2014年05月03日訪問)