山口盆地を取り巻く山地。市街から見て西の山並みを分け入っていくと龍蔵寺という観光寺院がある。
役行者開基ともいう伝説を持つ古刹だが、参拝者を楽しませようという趣向のギミックに満ちた寺である。
伽藍配置図は下の通りで、ちょっと現実の敷地の形状と違っていて、実際は図のイメージほど広くない印象を受ける。奥のほうに八十八ヶ所や磨崖仏などが描かれているが、見落とした!
境内入口から順番に見ていこう。
まずお迎えしてくれるのが握手地蔵。右手を差し出したポーズをしており、握手できる石仏。こういうさまざまな奇抜なアイデアを住職が考案しているのだろう。
水盤舎。
周囲は深い山で水も豊かなので、山水なのだろう。
そこから緩い石段が続く。
途中に鐘堂があるが、単層の鐘つき堂としてはかなり大型の建築だ。
石段を登ったところに一間一戸楼門。
年代的には新しそう。行っても戦前か大正ではないか。
ここから先は拝観料200円がかかる。
境内入るとすぐ右手に茶店がある。
門前町や仲見世ではなく、寺自体が茶店を運営するというのはときどきあるが、ちょっとやり過ぎな気がしないでもない。それが行き過ぎると広島の三滝寺みたいになってしまうが、もしかするとこの寺の目指すところも似たような感じなのかもしれない。
一種のテーマパークである。
楼門の左手には芭蕉地蔵。
松尾芭蕉と地蔵がコラボした日限地蔵だという。解説を読めば読むほどよくわからない。
しかも「空中に浮いて座していたことがわかりました。全く不思議なことで」とある。どう浮いているか、不思議かどうかは左写真を見ていただきたい。
そこから奥のほうに歩いて行くと、伝雪舟作の石庭がある。復元したもののようで、伝説の真偽はわからない。ただ、これまで雪舟作とされる庭をいくつか見た限りでは、確かにこんな感じではあるのだが。
そこからさらに短い石段を登る。
石段の途中には十二支地蔵なるものが並べられていた。
石段を上がったところにある本堂の観音堂。江戸後期くらいの建物か。
その本堂の左手に灯籠型の不思議な形の小堂がある。「中国四大聖地仏堂(名刺堂)」とある。山西省五台山、浙江省普陀山、四川省峨嵋山、安徽省九華山といった名だたる名刹をイメージした仏像を収納しているという。
特徴的なのはそれぞれの仏像の基壇が名刺ポストになっていること。
ビジネスマンはここに名刺を入れて拝むと事業が発展するという。
四大聖地堂のお国は宝物館がある。
内部にはわりとフランクに仏像が展示されている。
こちらが国重文の大日如来座像。
もともとは別の寺にあったのが荒廃したのでこの寺に移したという。藤原時代の像とされ、実際、そんな作風だ。
その横には大聖不動明王、毘沙門天がいる。毘沙門天もなかなかの名像と思う。
不動明王像、聖徳太子像。
なんだろ?
十王か? あるいは役行者に関係するとしたら蔵王権現?
信徒休憩所(?)。
信楽焼のタヌキとか提灯とか、必要なのかな。
本堂から右のほうへ進んで行くと鼓の滝へ至るが、そのあたりに不動明王の銅像がある。
大仏といっていいだろう。
「愛児の塔」という名前の水子地蔵堂。
鼓の滝。
龍蔵寺はもともとこの滝を行場として作られた寺だったのだろう。
水量は豊か。
ん? お砂踏み霊場とな?
しかも「会場」とある。
こちらがそのお砂踏み
2階建ての堂で、階上が護摩堂、階下がお砂踏みになっている。
これがお砂踏み会場の様子。
なんと、床下の砂が強化ガラスで見えるようになっていて電飾されている。
このライティングをたどるように歩けば御利益があるというしくみだ。
なんという未来感!
しかも、お砂踏みをしつつお宝も観賞できるという趣向。
最後に本坊のほうへ行ってみた。
本坊の厨子はカラーLEDでライトアップされていた。ミャンマーなどでは普通だが、日本の寺では初めて見た気がする。
実は私は国内の寺でミャンマーのLED光背を設置している寺を知っているのだが、いつか紹介できるだろうか。
(2003年09月06日訪問)