大麻座跡

跡地に建った倉庫に芝居小屋的な面影がある。

(徳島県鳴門市大麻町大谷竹の下)

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鳴門市から旧撫養街道を西に進む。

撫養町木津を出ると街道はしばらく田園の中を進み、次の大きな集落は「大谷(おおたに)」である。この町は藍の製造に必要な藍甕(あいがめ)の生産地で、大きな窯元が何軒かある。

撫養街道は大谷の町内でこれでもかというくらいに曲がりくねっているので、交通はすべてバイパスの新道を通り、旧道に入ってくるのは住人をのぞけばよほどの街道好きだけだ。

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この町には芝居小屋のひとつもあるだろうと当たりをつけ、道を歩いている老婦人に尋ねると、「この先に五分利屋(ごぶりや)という洋品店があって、その向かいが大麻座(おおあさざ)という芝居小屋でした。いまは倉庫になっています」とのこと。

行ってみると五分利屋はもう店じまいしてしまっていたが、倉庫はすぐにわかった。

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この倉庫が大麻座跡。

周囲の建物は当時のままで、芝居小屋だけが倉庫になっていた。そのせいか、ただの倉庫なのにどこか芝居小屋のような雰囲気が感じられる。

逆に、立江の映画館なんかは、映画館の建屋は残っているけれど倉庫みたいな外観だった。

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ところで、老婦人からこんなことを言われた。

「私、たぶんあなたを存じ上げてると思います。矢野陶苑の若さまじゃ御座いません?」

どうやら大谷を代表する窯元の若旦那と勘違いされたみたいだ。どうも、よく似ているらしいのだ。

今回訪ねた大麻座は、矢野陶苑の先代が経営していたのだという。芝居小屋として建てられ、映画を上映したかどうかは確認できなかったが、たぶん上映していただろうと思う。

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大谷の町の中の風景。

いかにも街道筋らしい地蔵堂。

➡場所

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こちらはたぶん元銀行。

年代はたぶん大正時代だろう。

➡場所

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和田歯科医院というオーナメントのついた擬洋風の医家。

➡場所

現在は県道のバイパスに面したところで営業している。

(2007年01月21日訪問)