「行田市の東部に来たんであそこ行っとく? 三重塔」
八幡山古墳から遠くない場所に、ちっちゃな三重塔のあるお寺があるのだが、友人は行ったことがないらしいので立ち寄っていくことにした。
三重塔があるといってもバリバリの観光寺院ではなく、郊外にある普通の檀家寺だ。
山門は薬医門。
門の両側には袖塀みたいなお堂があり地蔵様が祀られている。
門の左側は六地蔵。
門の右側は如意輪観音と2体の地蔵立像。
如意輪観音は二十二夜の月待ち塔にもなっている。
山門の前には幟立てと思われるものがある。
気になるのが、手前の背の低い石だ。
上面に杯状穴が掘られている。
左側の石には3つ、右側の石には2つ。
そもそも幟立ては同じ高さの杭が必要だと思うが、こんな短くていいのか?
山門を入って右側には宝篋印塔。
竿が小さく、屋根が大きな頭でっかちな感じの宝篋印塔だ。
その横には七福神の寿老人。
その横には子持ち石なるものがあった。
石の中に石が入っているような感じの石なのだと思うが、いまひとつどの部分なのかはっきりわからない。
子持ち石の隣りにはぴんころ地蔵。
健康で長生きして往生するときには患わずに逝きたいという願掛けをする地蔵様。ぽっくり地蔵などともいわれる。
長野県の臼田に有名なのがあるけれど、流行り神になることが多いような気がする。
ぴんころ地蔵の隣りには忍領大師二十一ケ所5番札所となる錫杖大師像。
山門の正面には本堂。
わりと新しそう。
内部の様子。
本堂の右側には玄関と庫裏。
で、本堂の左側に件の三重塔がある。
後ろの庭木と比べてほしい。庭木よりも低いのだ。でもよくある住職セルフビルトとかではなく、江戸時代中期のちゃんとした仏教建築だ。
いまのように建物をインターネットで検索できるようになる以前の高校大学時代には、お寺にどんな堂宇があるかはいちいち出かけて確認していた。初めてこの塔を見たとき、普通の檀家寺の庭の片隅に三重塔がある場合もあるというのを知ってカルチャーショックを受けた。 それ以来、知らない場所に出かけて日が暮れたあと、寺の樹がシルエットになったのを見て「もしかして三重塔では?」などという幻覚が見えるようになってしまったほどだ。
塔の内部はお堂になっている。
古い塔は心柱が1階まで通っているが、江戸時代の塔は心柱を1階の梁の上に載せて室内空間を作る例がある。
この塔も内部は須弥壇で、本尊の観音菩薩が祀られている。
塔の1層と友人の背の高さを比べて欲しい。
コンパクトな塔ってときどきあるのだけど、平均的な大きさの塔よりも強く記憶に残るよね。
塔を境内の外側から見たところ。
すごいよね。樹に隠れてしまう三重塔。
三重塔の前には小さな鐘堂がある。
三重塔の右側には鎮守社。
鎮守社には榎戸、稲奈利、愛宕、天満宮、厳島の5柱が合祀されている。
(2022年02月11日訪問)