小平集落の南に連なる山脈、名前があるのかどうかは知らない。長瀞の宝登山から寄居の鐘撞堂山までつながる標高500mほどのその山体は、群馬県民にとっては比較的存在感のある山だ。前橋・高崎地域からは、宝登山の裏を抜ける県道前橋長瀞線は秩父・山梨方面へのメインルートだし、円良田湖の峠越えは小川町西部や東秩父村方面への最短ルートになっていて、この山脈を越える機会は年に数回はある。
そのほかに、小平から分け入った榎峠、ワカサギ釣りで有名な間瀬湖の先の間瀬峠など、普通に暮らしていてもドライブや行楽の流れで何となく通ってしまう峠が多い場所でもあるのだ。ということは、歴史的にも人々の往来がそれなりにあったのではないかと想像はできる。
通り過ぎようとすると観光案内が出ていたので、見て行くことにした。時刻はもう18時近く、暗い森の中は写真を撮るのも難しい暗さ。
ここにはかつて不動滝という滝があり、水垢離場になっていたほか、電気冷蔵庫のない時代には氷室のための天然氷を製造していたという。
天然氷を作るには、プールのような水溜めが必要と思うが、そういう遺構は見つからなかった。そもそも滝というほどの滝でもない。水垢離場としては十分だが。
天然氷は食品の冷蔵にも使われたかもしれないが、もしかしたら、蚕の卵を夏や秋に使うための保存に使われることもあったかもしれない。先に紹介した競進社を設立した木村九蔵は、蚕種を山間地の風穴ではなく平野部の氷室での冷蔵庫保存を考案した人物だったからだ。
石灯籠がある大岩の先に小さなお地蔵様が見えた。
借金なし地蔵とある。
昭和初期に児玉町内の商人が借金返済の願掛けで建立したものだという。
不動滝からさらに峠道を1kmほど進んだところに、「ごっくん水」という観光案内板があった。
んもーっ! かなり暗くなってるけど、次の機会はないかもしれないから行っとくか。
車道からは少し谷に下りなければならない。
車道が開通するまではここが徒歩の峠道で、道行く人の水飲み場だったのだろうか。
比較的最近パイプが付けられたようだ。
ここからは長瀞町方面が遠くに見渡せる。
このまま荒川方面へおりて、本庄の町のほうで夕飯でも食べることにしよう。
(2014年05月25日訪問)