このころ私は吉野川右岸の社寺を順番に参拝していた。
その社寺をすべて紹介できる日が来るかは自信がないのだが、とりあえずこの諏訪神社を紹介するのは境内に石橋があるからだ。
150mほどの参道には桜が植えられている。
参道の途中には真新しい水盤舎がある。
氏子がまだこの神社をしっかりと支えていることがわかる。
拝殿の前には
私は関東で生まれ育ったが、注連柱って関東ではあまり見かけない。基本的には西国のものだと思うが、拝殿の直前にあってしめ縄がかけられているのは吉野川周辺の神社の特徴のような気がする。
向拝の虹梁の上にトラのような生き物がいる。
拝殿の基壇が50cmくらい高くなっている。
飯尾川が氾濫したとき、経験的にこの高さなら浸水しないということなのだろう。
徳島では低地の浸水は珍しいことではないが、家屋や自動車が流されたり、人が水死したりという災害にはならない。浸水しがちな場所が浸水し、たとえ辺り一面が水浸しになっても、家には被害が出ないような造りになっているからだ。
本殿はさらに嵩上げされているが、ここまで水が来るようだと注意の人家にも被害が出そう。
水害除けではなく、単に本殿をあがめるという意味の造りだろう。
神社の祭具倉庫も高くなっている。
神社のすぐ横は飯尾川だ。
境内から北側に石橋がある。
神社の北側の氏子が参詣するための橋であり、日常的に街道を通る人が使う橋ではなさそう。もしかしたら、飯尾川はこの神社の南側を流れていた時代もあるのかもしれない。
材質はすべて石材。
いわゆる阿波の青石と呼ばれる緑泥片岩で、吉野川南岸の山並みに産する。板状に割れるため、石橋などに使いやすい。
橋桁も青石で、コンクリートで固めていて軽車両ならば通行できそう。
欄干がないのは増水時の沈下を想定しているというのではなく、神社境内の石橋としてこうした意匠がふさわしいという意図のほうが強そう。
(2003年03月02日訪問)