ここまでで、口山地区に残る5軒の全タバコ農家を紹介できた。これから他の地区を見ていくが、その前に口山地区に残る元タバコ農家の民家や乾燥室(ハウス、
穴吹の町、穴吹中の裏手から口山へ行く道を登って行くと、だんだんと棚田がなくなり、傾斜した畑地が増えてくる。中西集会所のあたりまで来ると、視界が開けて渕名のソラの集落の風景を展望できる場所がある。
この場所には分かりやすい
こちらは、滑り台の記事でも紹介している空き家。
ハウス形式の乾燥室は屋根が抜けて崩壊し始めている。
建物の並びの最も右にあるのは蒸屋だと思われる。形態としてはベーハ小屋に似ているが、越屋根が小さい。これは戦前まで行われていた「火干し」という火力に頼った乾燥法のための乾燥室ではないかと思われる。
火干しが葉タバコの品質を下げるため、阿波葉では火干しをやめて屋外の干し場での連干しという方法を取るようになった。
現在確認できる阿波葉の「蒸屋」は、乾燥させることが主眼ではなく、黄変という発酵工程に使うため、棟に煙出しが付いていない。
口山では純然たる寄棟造りの建物が目立つ。しかも、出し梁造りとかせがい造りというような持送り構造がなく、カヤの厚みで軒を出す造りだ。
そのため、主屋の外周の開口部、障子やサッシュよりも軒が低くなっている。これは初めて見るとかなり特異な印象を与える。
こちらは片面が寄棟で、裏側が大蓋になっている民家。
反対側から見たところ。
反対側から見たところ。
遠目にもたくさんのハウス式乾燥室が見える。
阿波葉のピーク時には1.2万人の耕作者が生産に従事したというから、その生産施設は至る所で見つけられる。
現在、阿波葉からの転作では茶を植えている農家が多い。
私は学生時代に狭山で茶摘みのアルバイトをしていたが、実は茶摘みは1時間で200~300kgも収穫する重労働なのだ。
この写真くらいの面積だと2人×半日で収穫できるが、水分を含んだ葉は重量もあり、農道もモノラックもない傾斜地でやるのは大変そう。
(2008年06月22日訪問)