淵名の汽車滑り

汽車型滑り台と旋回塔があった。

(徳島県美馬市穴吹町口山)

2006年12月、このころ私は徳島県吉野川南岸の山間地でくさり場を巡っていた。くさり場とは修験道の行場で、危険な崖を登って(あるいは降下して)精神を浄化するための装置だ。

この日は穴吹町の穴吹温泉(閉鎖)近くの不動堂裏山でくさり場をチェックしたあと、そのまま標高を上げて淵名(ふちみょう)集落へと来てみた。きょうの目的、くさり場は見つけることができたので、そのあとはちょっとドライブでひと回りして帰るつもりなのだ。

淵名集落は高丸山東麓の標高500mの尾根筋にある高地集落だ。在来種タバコの「阿波葉(あわは)」の生産地で県内でも阿波葉農家が最も多く残っている集落である。

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阿波葉については、いつか丁寧に紹介していくつもりだし、12月では肝心の畑の様子など紹介しようもないから、とにかくまずは淵名の風景を見ていただこう。

淵名の風景の特徴は、とても軒の低い民家が多いことだ。下写真中央の銀屋根や緑の屋根の民家などがそれ。

一般に軒の低い民家は古いと言われるが、淵名の家々がその条件に当てはまるのか私にはわからない。

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葉タバコの生産というと、当サイトではベーハ小屋という建築物を紹介していて、そのジャンルはそれなりに愛好者も多い。

では阿波葉の場合はどうなのであろうか。阿波葉の乾燥小屋のことをこのあたりでは「ムッシャ(蒸し屋)」と呼ぶ。ベーハ小屋で加工する品種とは性質が異なるため、別の機能の建物が存在するのだ。

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この廃屋の一番右側にある越し屋根を載せた建物が古典的なムッシャである。そして、そのムッシャの左隣にある朽ちかけた波板葺きの小屋もまたムッシャなのだ。

古いタイプのムッシャはベーハ小屋のように内部が多層になっていて吊り上げ作業等が面倒なのに対して、新しいタイプのムッシャは建坪が広い代わりに1段吊りで作業も簡便化された。

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したがって阿波葉の産地で探すべきは土蔵の小屋だけではダメなのだ。

左の写真の白い屋根の細長い倉庫のような建物こそが、阿波葉乾燥小屋の最終形態であり、生きた葉タバコ産業を理解するために看過してはならないブツなのだ。

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その淵名集落の中を走っていたとき、小さな公園を見かけた。

汽車型の滑り台が目を引く。

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滑降部は徳島でよく見るFRP樹脂板タイプだが、タラップ部分が汽車になっていてゴッコ遊びも楽しめるという逸品。

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箱ブランコもある。

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そしてさらに驚くべきはこれ、回旋塔。

危険遊具とされ、撤去が進んでいるのでもうほとんど見ることはできないものだ。

遊具狩り3大ターゲットとされる、遊動円木、箱ブランコ、回旋塔のうち2つまでがこの公園には残っているのだ。いや~しびれる。

さすがに、使用禁止の札がついているが・・・。

さて?

上の写真で旋回塔の後ろにあるボロボロの倉庫、ちゃんと目に入ったであろうか。

これが阿波葉の乾燥小屋だ。もし見えたならあなたはかなりの眼力の持ち主だ。

(2006年12月17日訪問)