現在の三好市池田町大字
これから漆川地区の家々を遠望しながら、民家とタバコ乾燥室を見ていこう。漆川は小字がとても細かく、風景を撮影したポイントは「キシダ」という字の尾根。
ここから見下ろす尾根筋には何となくお寺っぽいたたずまいの家と、北側斜面に建物が建て込んでいる場所があり、そこに二つ櫓の乾燥室が見えている。
これが阿波葉の
何の前提もなく見れば、養蚕のための施設かなとも見えてしまうが、池田町エリアでは二つ櫓のタバコ乾燥室が他に見つかっているので、これは葉タバコの施設と見ていいだろう。
続いて、この場所から右方向に視線を上げていく。
漆川地区の北側の山並みである。
こうした広い傾斜地がかつては葉タバコ「阿波葉」の産地だった。鉄塔がある稜線は峠で、その稜線の裏側はタバコの都、池田町。徒歩でしか越えられないが峠道があり、池田駅や専売局タバコ工場への最短ルートになっていた。多くの阿波葉がこの峠を越えて出荷されたのだろう。
いまは杉の植林が目立つが、かつては薪炭を利用していたからもっと樹が少なく、段畑が広がる風景だったはずだ。
中央に見える蔵はおそらくタバコ乾燥室。
主屋は切妻総二階に
養蚕地帯の総二階民家では2階には居室がなくほぼ養蚕の作業場なので、これも2階はタバコ専用の作業室だった可能性がある。
崩れた民家から少し視線を上げると、切妻の主屋が直列して並んでいる家がある。
急傾斜地で平地がないので、どうしてもこうしたレイアウトになるのだろう。
主屋裏手の畑の傾斜が凄まじい。30°くらいあるんじゃないかな。
全景の右上の見切れているあたり、五ノ丸山の南斜面。
阿波葉の蒸屋が見える。
その近景。
他の家々もほとんどが阿波葉に携わっていた農家だ。
少し場所を移して、漆川地区南側の風景。「南谷」という字になる。
寄棟屋根で大蓋を下ろしていない民家。桟瓦葺きの大蓋を巡らすのは比較的時代が下ってからではないかと口山の項でも書いたが、この家の軒の低さに注目してほしい。サッシュの上1/3くらいまで軒がかぶっている。
これ、もしかしたら池田町の民家調査資料に載っている大西家かな? だとすれば文政12年(1830)築といわれる古家だ。
(2009年06月28日訪問)