旧
白い寄棟屋根が見える山体の上が盆地になっていて、四国では珍しい大きな湿原が形成されている。40ヘクタールほどの湿地で、降った雨は山の南の縁から滝になって落ちているという、まさにテーブルマウンテンのような地形なのだ。
そのテーブルマウンテンの崖のような東斜面に数戸の民家が見える。本当に、どうして人はこれほど険しい場所に住み着くのか・・・。
この家は谷側からは斜面が険しすぎて近づけない。黒沢湿原から降りていくことでしか行けない場所だ。
3年前に黒沢湿原を観光したとき、偶然この家へ行く道を下ったことがある・・・2006年10月のことだ。
そのころ屋根の色はブルーだった。
道を下る、といっても家の敷地で行き止りになっているから行けるのはその手前まで。
すごい場所だなあ。
雄大な景色が広がっているのに、見えるのはどこまでも山並みだけ。地球という惑星に自分たちだけが住んでいるような気持ちになってしまうのではないか。
めったに人が来る場所ではないから、番犬がすぐに走り出てきた。
主屋は大蓋を降ろした寄棟の草屋根。大棟に近い位置に小さな気抜きがある。その手前の2階の建物は納屋で、もしかすると2階は隠居屋かもしれない。
家の敷地の前には稲架掛けがあって、蕎麦を干していた。
この家の入口付近に土蔵の蒸屋と思われる建物がある。
井内西で見た土蔵と似ていて、屋根勾配が急。ただしこちらは草屋根ではなく鉄板に葺き替えられていた。
専売局以前の古い乾燥室の可能性を秘めた貴重な建築だと思う。
(2009年06月28日訪問)