国道247号線は知多半島の外周を一回している道だ。だまって走れば、誰でも半島一周の旅ができる。その国道274号線を半田市から南下して、武豊町へと入ったすぐのところに蓮花院という寺があった。今となっては立ち寄った理由は思い出せないが、たぶん国道に目立つ看板でも出ていたのだろう。
山門は薬医門。
境内に入ると正面に二重塔ふうのあやしい堂が目を引く。
本堂も重層2階建ての構造でかなり奇抜な寺と言えるだろう。
通常、2階建ての本堂では1階が駐車場や納骨堂などになっていて、意匠の上でも1階は“巨大な床下"という感じの作りが多いが、この寺では1階と2階の間に屋根があり、2層2階の構造になっている。玄関も中二階のようになっており、挑戦的な設計として評価したい。
入ってみたら1階は演芸場のような感じの作りになっていた。法事をする場所だろうか。2階は普通の本堂である。
玄関の右側には納経所、その背後には庫裏。
本堂に比べると二重塔のほうはややコッテリ感に欠ける作りだ。
内部には弘法大師が祀られている。
祭壇の右側には扉があり、どうやら2階へ登れそうな雰囲気だ。
左上の写真の2階の左側を見ると、階段室のようなものが付いており、そこに出るのではないだろうか。
2階には欄干があり、この部分を一周して2階の室内へと入るという構造なのかも知れない。2階の室内はそれほど入りたいような空間ではないのだが、微妙にさざえ堂っぽい空間と言えなくもない。(あえて言えば、西新井大師のさざえ堂に近いかも知れない。)
堂の左にはいろんな仏様がつっこんである倉庫のような堂があった。阿弥陀堂ということにでもしておこう。
薬医門の左側には東司、黄金観音付きの水盤舎があった。
ところで私はいま四国に住んでいるが、当地でお寺参りが好きだと言うと決まって「八十八ヶ所行きましたか?」と訊かれる。だが私は札所巡りというのをしたことがないし、歳をとってからもしそうにない。自分にとって寺巡りは一期一会の出会いのようなもので、あらかじめ決まった数を目標にして、それを達成しようという“欲"はない。もし仏に救いを求めるとしたら、たった1ヶ所の寺、1柱の仏像でも救いは得られるように思うし、野の花、道端の石にさえ神や仏は宿るのではないかという気がする。
ところが巡礼の人たちは情熱的に札所の寺を廻るが、途上に別の寺があっても素通りだし、道端に石仏があっても省みることもない。バスをチャーターした巡礼団ともなれば、下手をすれば本堂にも行かずに大師堂と納経所へまっしぐらという光景も珍しくない。つくづく“一神教"だなあと思ってしまうのだ。どうも私はそこまで一心不乱に神仏を求めることはできそうにない。
この日はこれ降も新四国霊場の寺をいくつか紹介することになるが、たまたま進路上にその寺があったというだけであって、特に札所巡りというテーマで寺巡りをしていたわけではない。
(2001年11月25日訪問)