稚蚕飼育所をさがしてこのあたりを訪れたとき、繭倉庫らしきものを偶然に見かけたのがこの物件。上高瀬組合製糸の繭倉庫だ。今回は倉庫だけを目的に再訪してみた。
以前訪れたときはまだ製糸の遺構をそんなに積極的に見ていなかったので「組合製糸のレンガ倉庫が富岡のほうにはけっこう残っているものだな」などと漠然と思っていた。あとでちゃんと調べてみると、レンガ造の物件は実は5ヶ所(ここ、中沢組合製糸、丹生組合製糸、甘楽社小野組、甘楽社乾繭場)しか残っていないことを知った。
前回の考察では、敷地の裏に用水して水車などをかけたのではと書いているが、どうやら用水は敷地の前側に流れているようだった。暗渠になっているのでわかりにくいが、写真中央の青い水門や、奥に見えるトラ模様の車止めで用水があることがわかる。
水車の動力だけでなく、繰糸には大量の水が必要なのだ。
倉庫はきれいに残っており、現在も工場の倉庫として使われているのではないかと思う。
工場の敷地内のため勝手に立ち入れないので、倉庫をつぶさに観察するよりも、「組合製糸ってこんな田舎にあったんだなぁ」というように昔に思いをはせるのがよいかもしれない。
北側かたみたところ。
1階に扉が2ヶ所、2階に窓が2ヶ所。
繭倉庫としては、開口部はこんなものだろう。
南側からみたところ。
1階と2階にそれぞれ、窓が2つあるだけだ。
窓のまぐさ石や鉄扉の意匠は、中沢組合製糸の倉庫と酷似しているので、同じ大工が建てたのかもしれない。
工場の敷地の北側には稲荷社があった。
建物は新しいが、以前は組合製糸の屋敷神だったかもしれない。
(2013年11月24日訪問)