山陽道沿いの寺町を離れ、きょうの長府地区の最後の訪問地、覚苑寺へと向かう。
場所的には城下町の町並みや忌宮神社界隈とひとつづきなので、場合によってはすべて徒歩で廻ってもいい場所だ。
ただ私的には、よほどのハイシーズンでなければ長府地区の寺は細かく車を移動させたほうがいいように感じた。
覚苑寺は黄檗宗で、背後に山を背負っているため静かなたたずまいの禅寺だ。
参道は梅林になっている。
山門はなく、参道をすすむと短い石段があり、仏殿がある。
この仏殿はもともと防府市にあった黄檗宗寺院、海蔵醍醐寺の本堂だったものが廃仏毀釈で廃寺となりここに移築されたものだという。山口の旅ではそんな寺が異様に多かった気がする。他県もそうなのだろうか。
山陽道の修景もそうなのだが、明治以後に作られた歴史的な風景って意外に身近にあるのだろう。
移築前の仏殿は江戸後期、寛永6年(1794年)に建てられたものだという。見た目にもまあ、江戸後期の雰囲気どおりと感じた。
移築の際にも多少は修復され、昭和にも改修されたのだろう。比較的外見はきれいになっている。
仏殿の前に御神籤の自販機が基壇付きで設置されているというのもめずらしい。
内部。
須弥壇の上に扁額があり、「
仏殿の右側には鼓楼と思われるものがあった。
仏殿の右側にある和同窯という陶器の工房。
たぶん寺の一部だと思うのだが。寺が工房を運営しているというのはほかではあまり見た記憶がない。
仏殿の背後には方丈がある。
いわゆる万福寺式の伽藍のように、正確に仏殿と方丈が整列しているというのではなく、やや右にずれた位置に方丈がある。
これは仏殿が明治に移築されたという関係もあるだろうし、山口県下の仏殿はそもそも直線的な配置でないもののほうが普通なのだ。
方丈の左側には穴門がある。
境内にはモミジが多いので、紅葉の季節には美しいだろう。
裏山には三十三観音ミニ霊場があったが、雨がちの天気なので行かなかった。
境内にあった音声ガイドと投句ポスト。
寺とは関係がないが、覚苑寺の門前には素敵なモダニズム建築がある。
これで下関市の長府地区の寺巡りはおしまい。徒歩中心でゆっくり見学したら3時間くらいはかかりそうだった。
(2004年05月04日訪問)