私が横浜から徳島に転居して半年がたっていた。新しい仕事にも慣れて、自分の住んでいる場所を探索する余裕ができた。夏の終わりには自宅のすぐ近くを流れる鮎喰川の上流の神山町をだいたい見て回り、秋にはその隣りにある美郷村へと足を伸ばした。
その後、美郷村には何度も出かけで車窓からの風景も見慣てしまったが、この2002年ごろの美郷村訪問はまだ徳島県の土地勘がなかったのですべてが新鮮に見えたものだ。実はそういう時期に撮った写真は、上手ではなくても力があるように思える。
この日は3回目の美郷村。
これまでの2回は東山鉱山のある東山谷川方面だったのだが、きょうは川田川上流方面を見て回るつもりだ。
最初に訪れたのは宮倉八幡神社。
周囲には数軒の商店があり、美郷村奥地の住人にとってはささやかながら最後の商店街になっている。
その商店の横に宮倉八幡神社はある。
境内へは車で乗り入れできそうだが、県道に路駐して徒歩で神社へ向かうことにした。
神社の参道は県道から石段を下っている。
参道よりも本殿が低い「下り宮」である。
拝殿は全体が雨戸で閉ざされた密閉度が高い建物。
基礎が石垣で高くなっているので、向拝部分から石段で登るようになっている。珍しい造りではないかと思う。
右側には格納庫のような下屋が付属している。神輿庫か。
拝殿の後部は凸型で、流造りの本殿へと接続している。
ここでひとつアドバイス。徳島県で神社を見るときの重要なチェックポイントは本殿の濡れ縁である。この場所に木像の随身や狛犬などが置かれることがある。必ずチェックしよう。
この神社では脇障子の前に木製の祠が置かれていた。
拝殿の左側には社務所。
境内にはほかに忠霊塔がある。
忠霊塔としてはかなり立派な部類だ。
忠霊塔を建てたときの寄付者の名前は砲弾型の碑に彫られている。
これが左右に1基ずつ。
あっけらかんと勇ましい時代だったのだ。
神社の背後の集落。
美郷村は急傾斜で石積みの段畑が特徴的な山村だ。
(2002年11月10日訪問)
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ムック – 2022/7/25
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