徳島では5月の中旬ごろまでに多くの田んぼで田に水が入る。田んぼが一番美しく見える季節だ。
そのころになると私は吉野川下流域の田んぼを見にでかける。お目当ては、私が「タシマ(造語)」と呼んでいる物件。左写真のように、田んぼの中にある島である。
よく見ると、島には船形光背の僧形の石仏のようなものがある。多くの場合それは古い墓だ。
徳島市の西部吉野川の氾濫原にはタシマがたくさん見られる。国府町は特に濃密に分布している地域のひとつである。これについてはいずれ詳しく書きたいと思っている。
今回はそのタシマ巡りの途中で見かけた神社を紹介しよう。
神社は古い集落の外縁の道にそって、南北に長細い境内をもっている。
境内の南端には大正7年に建てられた石鳥居。大正時代に鳥居造営ブームでもあったのか。
拝殿と一体化した本殿は低い石垣の上に載っている。この高さがこの集落が川の氾濫で水没する高さなのだろう。
境内には見慣れない二連式の滑り台がある。
滑降部に細かい束柱のある手すりがあり、年代的には古そう。だが全体的な姿は個性的ですなおにカッコいいと思う。
特に滑り出しの手すりのカーブが全体を引き締めている。もっともこのように進行方向に狭くなるようなパーツは子どもが首や手足を挟んで抜けなくなったりする危険もはらんでいる。
横から見るとタラップから直接滑降部になっていることがわかる。公団型滑り台の類型だが、平行進化の産物だろう。ノーデッキ台とでも呼ぶか?
松葉型の4本柱は日都産業の滑り台に多く見られるが、この物件には特にロゴやコーションプレートは見当たらなかった。
この滑り台を決定的に個性的にしているのは、タラップだ。
横並び2連や3連の滑り台ではレーンの数に対応してタラップがある場合と、1レーン分のタラップを共用するのが普通だ。
だがこの台では、横に連結した滑降部の幅いっぱいに、ひとつの広幅の階段が付いている。
じゃあ、階段の真ん中あたりを登って行くとどうなるかというと、写真のように何もない崖になっている。
この集落で育った子どもたちは、この広幅の階段に座っておしゃべりしたり、あるいは、何か独特の遊びを生み出したりしたのではないか。
境内の他の遊具を見ていこう。
支点固定、笠木型ハンドル、円錐スプリングのシーソー。
これまでシーソーもそれなりに紹介しているが、円錐スプリングはT字型ハンドルのものが多く、笠木型ハンドルとスプリングの組み合わせのシーソーは初出である。
2人のり箱ブランコ。
箱ブランコとしては最小のパターンであり、かなり珍しい物件だと思う。これより小さい構成として「1人乗り箱ブランコ」というものが想定されるが、はたして1人乗り箱ブランコは存在するのだろうか。存在したとして、はたしてそれは箱ブランコと呼べるのかどうか。
柱は松葉型の4脚だが、そのうち1本は切り株の上に刺さっていた。
他の場所から移動して仮置きしてあるのではなかろうか。
ところで、一般に箱ブランコと呼ばれるものには2つのパターンがある。ひとつは剛体のゴンドラが1つの支点で揺動するタイプ。もうひとつは2つの支点から懸架され平行四辺形に変形しながら揺動するタイプだ。一般的に前者は丸いデザインであり、後者は四角いデザインとなる。
しかしこの物件は、変形揺動タイプでありながら全体のデザインが丸という、かなり意欲的な設計になっている。
(2007年05月12日訪問)