湘江庵

柳井市の名前の発祥とされる井戸がある。

(山口県柳井市柳井)

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誓光寺の隣というか、境内の角地にめり込むようにある寺、湘江庵。

もしかしたら元々は誓光寺の塔頭だったのかも知れないが、宗派は異なり、こちらは曹洞宗。

山門は薬医門。

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山門を入ってすぐ左側に十一面観音堂がある。

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観音堂の内部。

左側に安置されているのは脇侍ではなく、虚空蔵菩薩で、これは日本三大虚空蔵菩薩のひとつだという。

案内板によれば残りの2つは、宮城県登米市にある柳津虚空蔵尊と、福島県柳津町にある柳津虚空蔵尊だという。

あれ? なにげに日本三虚空蔵、コンプリートしたんだけど?

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残りの2虚空蔵がそれなりの規模の虚空蔵なので、ここが3ヶ所目というのは異論もあるかと思う。

でも、ひとつ看過できない共通点がある。それは、いずれも地名が「やないづ」であることだ。これは以前の2ヶ所目に行った時にも気になっていたことで、偶然ではなく、何かしら意味がありそうな気がするのだ。

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柳井市の合併前の旧地名は「柳井津町」で、現在の重伝建の町並みの辺りの地名である。そして、その名前の起こりはこの寺のこの井戸なのだという。

この柳にはこんな伝説がある。

飛鳥時代に都に顔にあざのある玉津姫という姫がいたが、結婚相手が見つからなかった。仏のお告げで豊後(大分県)に住む貧しい炭焼きの男の妻になる。男は貧乏だったので姫が黄金を与えるが、男にはその価値がまるでわからない。こんなものは炭焼小屋のまわりにいくらでもあると。

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姫が炭焼小屋に行ってみると、大量の黄金を見つけたのだった。またその近くの水で顔を洗ったところ、姫の痣が消えた。二人は真名野長者と呼ばれ幸せに暮らした。

やがて二人は美しい娘、般若姫をもうける。その美貌の噂は都にまで届き、時の皇子から求婚される。皇子は変装して長者の家の下男として住み込み、般若姫と結ばれる。皇子は都に帰ることになったが、般若姫は身ごもっていたので皇子ひとりが先に帰ることになった。そして「生まれた子が男なら子どもを都へ上らせよ、女なら子は跡取りとして残して姫が私のところへ来るように」と伝えた。

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生まれれたのは女の子だったため、約束通り子どもを長者の家に残し、船で都へ上ろうとしたが、周防の沖まできたところ嵐になり難破してしまう。

般若姫は村人に救出され、きれいな水を求めた。そのとき村人が与えたのがこの井戸水だった。姫が持っていた柳の楊枝を井戸の側に差したところこれが根付いたため、ここを「楊井(後の柳井)」と呼ぶようになったという。

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小さな寺だが、意外なロマンを秘めた寺であった。

境内には、観音堂のほかに、本堂、庫裏、鎮守社などがある。

(2003年09月03日訪問)