内山観音・蓮城寺

般若姫を弔うために創建されたという寺。

(大分県豊後大野市三重町内山)

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きょう最後の訪問地、内山観音。

寺へ向かう途中、山の上に大仏っぽいものが見えた。

般若姫の像だ。平成3年(1991)建立で像高は20mあるという。

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般若姫については、以前、山口県の旅で触れている。

般若姫は6世紀(飛鳥時代)の伝説上の人物で、現在の臼杵市深田に住んでいた真名野長者の娘。大変な美貌の持ち主でその噂は都にまで届いていた。そのときの第四皇子は般若姫を娶りたいと考え、身分を隠してこの長者の家に住み込んでいた。皇子は姫のピンチを救って結ばれるが、継承権上位の兄弟が死亡したため都に戻ることになった。姫は懐妊していたため同行できず皇子だけが都に戻り、後に姫だけを上らせることになった。

ところが、姫を乗せた船団が周防灘にさしかかったとき、龍が現われ船は次々に沈められてしまう。その龍は長者が開拓で埋め立てた沼の主だった。般若姫はそれを知って、龍の怒りを鎮めるためみずから海に身を投げたという。

これが般若姫の伝説である。姫の死を知らされた真名野長者は、姫を弔うために中国から蓮城という僧を招き、寺を建立した。その寺がここ内山観音・蓮城寺だということだ。

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まあ、もちろん内山観音が飛鳥時代創建の寺院というわけではなかろうが、この地域が般若姫伝説の地といわれている中で、蓮城寺はその中心的存在である。

寺は伽藍も多いが、門前町があるような観光寺院ではなく、地方の有力寺院といった感じ。到着したのが17時近かったので、観光客はおらず、境内はひっそりとしていた。

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では境内を見ていこう。

無料駐車場があり、境内の拝観も無料。

山門は四脚門。

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山門をくぐると正面には本堂がある。

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本堂の左隣には輪蔵。

外観の写真を撮りわすれた。これはその内部。

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本堂石段下の左側には水子地蔵。

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石段下の右側には水盤舎がある。

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水盤舎のさらに右側には鐘楼がある。

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本堂の右側には渡り廊下でつながった不動堂。

5年前にここを訪れた珍寺大道場によればこのお堂の地下というか床下にお砂踏み霊場があるということだったが、きょうはシャッターが閉まっていて入れなかった。

夕方だから閉じていたのかもしれないが、なんとなく普段から開いていないんじゃないかという感じがした。

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不動堂の右にはさらに渡り廊下でつかがった大師堂。

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その先には、庫裏、事務所兼信徒休憩所がつながっている。

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不動堂と大師堂の間の渡り廊下の奥に、一寸八分観音という案内があったので入ってみた。

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寺の裏側になるのだが、川になっていて橋が架けられている。

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一寸八分観音とは、真名野長者が子どもに恵まれなかったときに信仰した観音像で、般若姫とともに周防灘に没したが、魚の腹から見つかりこの地にもどされたというもの。

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さて、続いて般若姫の像のほうへ行くのだが、寺から像までは200mくらい離れていて、いったん車道に出て移動することになる。

寺から見て道路の反対側に淵がある。

この淵を「金亀ヶ淵(きんきがぶち)」といい、般若姫の母の顔のアザがこの水で消えたとされる淵である。

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少し歩くと、薬師堂というお堂がある。

このように横に長い境内に、途切れ途切れに伽藍があるのは古い密教寺院にありがちな配置だ。

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こちらのお堂は夕方というのに開いている。

内部には998体の薬師像が、三十三間堂みたいに並んでいる。

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中は手前1間が外陣で、内陣との間に柵のある密教形式。

ただし、内陣の境界にガラスがあるため、998体の像の全容をカメラのフレームに入れることができない。

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ガラスの反射もあるので、なんとか斜めに撮ってみた。これが限界。

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数えなかったけれど、確かにこれは1000体くらいありそう。すごい!

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中央には座像の薬師如来と、脇侍の日光、月光菩薩。

制作年代は不明という。そんなに古い感じはしない。江戸中期くらいじゃないのか。

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千体薬師堂を出て、般若姫像のほうへいく途中にある鎮守社。

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般若姫の両親の墓とされる宝塔。

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少し山の上に登って行く。

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般若姫像に到着。

般若姫の手前にある小さな像は、姫の両親。

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基壇の裏側へ回って見たらドアがあって中が見えていた。

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基壇の中は空洞で、特に祭祀設備はなかった。

天井も床スラブがむき出しで、階段などはないので像の内部へ入ることもできなさそう。

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堂宇の多い寺だし、千体薬師や般若姫像も見ごたえがあったのだが、時間が遅かったためなんとなく寂しい雰囲気の寺だった。

これできょうの観光はおしまい。

このあと臼杵市内へ移動。ホテルにチェックインをすませてから外出した。「鳥料理ふゆ」という店で鳥料理を堪能したあと、郊外の日帰り温泉「臼杵湯の里」で疲れを癒す。あしたもまだ臼杵エリアで磨崖仏めぐりの予定なのだ。

(2012年03月25日訪問)