2011年の秋、1泊2日で愛媛県に出かけた。蚕糸業に関連するスポットを訪ねるためだ。
私が住んでいる徳島県は最近までは四国で最も養蚕が残っている県だった。古くは吉野川平野に広大な桑園があり、鴨島町には筒井製糸、片倉工業などの製糸会社の雄が工場を構え、蚕都と呼ばれるほどだった。
だがその蚕糸業も徐々に衰退していた。四国の製糸工場を失うと、生きたままの繭を冷蔵トラックで関東まで出荷せざるを得なくなり輸送コストが負担となった。農家の高齢化で、新しい補助金制度に移行しなければならないときにまとめ役もいなかった。そうして、2009年を最後に徳島県内では養蚕農家はすべてなくなったのだった。
ところが徳島から蚕糸業が消えたあとでも、愛媛県には変わらずに養蚕が残っていた。愛媛県には野村町の製糸工場の流れを汲むシルク博物館が出口となって養蚕農家を支えていたのだ。